分解する歓び!

このところA君は教室にやって来ても、何もしたくないという。そう言いながらも、必ず時間になるとやってくる。
「描きたくなったら描いてね」と、一応机の上に画用紙を置く。
長年教室を続けていると、いろいろな子ども達の変化に遭遇する。
A君の態度も特別なこととか、困ったこととかは思わない。きっと、自分でもわけの分からない鬱屈した気持ちがあるのかもしれない。
今まで、何人かこのような子を見てきた。大体思春期を迎える時が、多いような気がする。
現在大学生の今も教室を続けているB子ちゃんも、六年生のころそうだった。
先日、今は大学生活、バイトなどたくましい日々を過ごしているB子ちゃんに、あの頃のことを聞いてみた。
「あのような時はどうしてほしいの?」
「うーん、そっとしておいてほしいかな。なんでとか聞いてほしくない。だけど、無視されるのも嫌なんだよね。時々、世間話のように声もかけてほしいかな」
なるほど、なるほど。確か、当時もそんな風に対処したと思う。あながち、自分の方法は、それほど間違ってなかったと、ほっとする。
とにかく立ち上がって来るまで 待つ。
「何もしたくないのに、教室にはきたいんだよね」
なるほど、その子が立ち上がって来るのを、待つのは結構緊張感を伴う。でもじっと待とう!

 そして、先日A君は言った。
「あのさぁ、何か分解する機械とか電気製品ってない?」
わたしは、張り切って教室中を見回した。あった、あった、捨てようと思ってそのままになっていたファンヒーター。
夢中になって、ドライバーでねじを回し、分解するA君。なんだか楽しそうだ。
これは参加しないわけにはいかないと、他の子達も一緒にやりだした。二年生になったばかりの女の子も大喜び。
知らぬ間に、彼らはねじを分け合ったり、会話を楽しんだり、できないところはお互いに、できる子に任せたり。
協力しあう姿が、自然に出来上がっていく。
なんだか、感動して見入ってしまい、写真を撮るのも忘れてしまった。
気が付いて、やっと撮ったのが大ブレ。でもアップしちゃいます。
終わった時の、子どもたちの顔が清々しかった。
帰った後を見ると、なんと、周囲の掃除までしてあった。








翌日、残った部品を写真に収めた。
大きなものがしっかり残って、そこから子どもたちの弾けた声が聞こえてくるようだった。