S君の作文 

先日、S君のお母様からS君の卒業文集に載せた作文のコピーを頂いた。 
読み終わって、幼児の頃教室にやってきてから今までの事を思い出し、胸が一杯になった。
全文を掲載します。




『 夢を探る
 ぼくの将来の夢は、詳しくは決まっていませんが、手先を使う仕事をしたいです。なので、ぼくは学校の授業では、図工が好きです。ぼくは、小さい頃からなにかを作ったり絵を描いたりする事が好きでした。最初は家でなにかを作ったり描いたりしていましたが、幼稚園の年長か年中ぐらいから、造形教室に通い始めました。和泉の図工は楽しかったけど、もうすぐ和泉小学校を卒業しなければなりません。中学校には、美術があるので楽しみです。そして、もっと絵を練習して、手先を器用にしたいです。和泉小学校で一番思い出にのこった作品は、ウクレレです。なぜかと言うと、六年間で、一番やりがいがあったからです。とくにやりがいがあったのは、やすりをかける所です。なぜかと言うと、何度も何度もやすりをかけたからです。時間がとてもかかりました。二番目に思い出に残ったのは、六年の二学期に図工で作った時計です。今作っている最中です。実際に家で使えるのでわくわくします。高学年から,実用的なものを作ることが増えたので、前よりもっと楽しくなりました。ぼくは、中学校に行ったら美術をがんばりたいです。そして、将来、手先を使う仕事をするために夢を探りたいと思います。』

幼児時代、S君は教室を走り回っていた。小学校になってからは、学校でうまくやっていけないのか、私の教室でも落ち着きがなく、常にぼくを見てと信号を送ってきた。信号の送り方は様々で、わざと足を投げ出したり、画用紙に書きなぐったり、時には私の肩をゴツン。いつかきっとと信じつつ、正直言って大変な子を引き受けてしまったという思いもあった。お母様とも何度か面談をした事もあった。ところが四年生になった頃だろうか、S君はがらりと変った。コツコツと絵を仕上げていく。わからないことは「先生、どうやったらいいの?」と質問してくる。丁寧に答えていると「わかった」とにっこりする。
この春でS君は中学生になった。今は毎週油絵をとても楽しそうに、じっくり描いている素敵な少年だ。
そして、私はS君から、子ども達をこの子はこういう子どもだから仕方がないとか、色眼鏡で見たり、レッテルをはってみてはいけないことを再確認し、自分の力で起き上がってくるのを、ゆっくり静かに待つことを改めて教えてもらった。
そして、いつの時でもS君に寄り添い、じっと機が熟するのを見守り続けていらした、ご両親に胸が熱くなった!   


S君の六年生時の作品
『虚と実』