子どもの力

連休はいかがお過ごしでしょうか?
久しぶりに本の紹介です。


静山社・ロブ・ブイエー著
新学期。5年生になった7人の子どもたちが、新米先生との出会いで変わっていく様子が、それぞれの声で丁寧につづられていく。
・いたずら好きで常に、他の子達を翻弄するピーター
・転校生のジェシ
・プライドが高いルーク
・学校嫌いのジェフリー
・太っていることにコンプレックスを持つダニエル
・クラスの女ボスアレクシア
・おとなしいアンナ
最初頼りないと思っていた先生だが、子どもに寄り添った工夫のある授業で、閉じていた子どもたちの心を開いていく。
どの子も開いていく心の軌跡が読んでいて圧巻だ。
読者は、7人の子のどの子かに共感して読むだろう。
しかし、子ども達を包み込むあまりに、大変な事件が起きた。
それをきっかけに、子どもたちがまた一つ変化していく様子が、子どもたちの声でつづられていく様子が興味深い
続編が読みたくなる作品。





NHK出版・トーマス・アームストロング著 
どんな子にもできないこととできることがある。
どうしてもできないことにばかりに目が向けられ、その子を否定的にとらえてしまうことが多いのではなかろうか。
だが、その子のできることに目を向け、じっと耳を傾ければ思わぬ発見や、才能に気が付くことがある。
本書は、その個性に合った環境作りがひいては社会全体を豊かにするという考え方から、自閉症ADHDディスレクシアなど7種の脳をテーマに、それぞれに合う新しい教育のあり方を提案する実践ガイド。
わたしの教室にもハンディを持った子たちが通ってきている。
絵を通して、また他の子達と共振しあう中で、彼らの中からあふれる思いや、才能に何度も巡り合うことがある。
また他の子達からも気づきや、彼らといる楽しさが伝わってくる。
障害があろうがなかろうが、一人一人に向き合うことで、どんな子の中にも素敵な個別の個性が潜んでいる。
この本を読んで、さらに強く思いを新たにした一冊。









駒草出版・上原孝一郎著
本作は、1987年に小学校の先生である著者が、子どら達と演劇活動、街歩きなどを共に歩み、思春期の葛藤や悩みを子ども達一人一人が、自分の力でどう乗り越えていったかを丁寧に追う実践記録。
そこには子ども達と、見守る先生との輝くような信頼関係が光を放ち、思春期の子ども達に向かって示唆される宝庫がたくさんある。
著者は書く。こども達に物事を自分の眼でよく見つめてごらん、よく思い出してごらん。そこから借り物ではない自分の力や価値観が生み出されていくと。絶版になっているのが残念だ。
覆刻されることを祈願する。
読みながら、この本に出てくる今からかれこれ三十年程まえの子ども達と、今の子ども達を少し比べてみた。
ネット社会、ゲーム、スマホ、おけいこ、塾、多様な情報。その中で、子ども達が流されないように、自分に向きあう時間がどれほどあるだろうかと、ふと思う。だが、いつの時代でも子どもたちの中に変わらないものがあるはずだ。
それを、見守り引き出していけたらと、本書から再度確認させてもらった。







三冊とも、子どもたちに対する深い信頼、そして決して結論や結果を急がないで、子ども達の考える力をゆっくり引き出していく示唆に富んでいる。
是非、ご一読を!