K君に寄り添って

私の教室にK君という子がいる。入会して約半年。
足が不自由で立つことは出来ても、歩けない。助けがあればよろよろと歩くことはできるが、移動はもっぱらはって行く。
いくらか言葉は出るが、今現在は発語は難しいが、こちらの言うことはかなり理解できる。いろいろな意味でハンディを抱えたK君だがお茶目で人懐こく、中々の知恵者である。が、最初はどのように対処していいのか戸惑いも多く、とりあえずは彼に寄り添ってみようと手探りの中でのスタートだった。 

先日、K君が素敵な車の模様がついたTシャツを着てきた。
「これは何?」とK君の胸を指さし聞いてみた。
「ブーブー」すぐに答えが返ってきた。
チャンスと思い車を描こうねと小さな紙を出し、クレパスでと言ってみた。
クレパスを一生懸命出そうとするK君。K君がカバンの中から自分で出すまで手を出さない。
頑張れK君!
時間がかかったけれど自分の力でクレパスをだせました。すごい、すごい!
その後、絵の具も出したが、絵の具はしまおうねと言ってみる。
K君は首を横に振る。拒否のサイン。
今まで、嫌がると彼の意志をかなり通してきたが、この何か月かの観察で、首を横に振ることは、一つには気を引いてみたいという気持ちもあるような気がした。
彼の意志ばかりを尊重していたら達成感を感じることが出来ないまま過ぎて行くのではと思い、その日は思いきってこちらの方針を通してみることにした。
K君は偉い!
自分の意志が通らないことも学習。その上、小さな紙にブーブーーと言いながら、描くのがだんだん楽しくなっていくようだった。
しまいには、青、赤と不確かながら、名称まで発語するようになった。描いたものを全部色画用紙に貼って出来上がり

カメラを向けると、今までカメラに興味を示し触ろうとして(因みに彼はケータイも大好きだ)決して撮らせてもらえなかったが、なんとなんと、はいポーズ。
いいお顔。  ちょっと照れちゃうなぁ  満面笑み、やったね。K君!  おかたずけもバッチリ。     
   

その後お母さんのお迎えまでに靴をはいて準備をすることにした。
一生懸命下駄箱から靴をだし、はこうとする。危なさそうな時と出来ない時だけ手を出すことにする。
生活の中で自然な形で筋力がついて行くのが望ましい思うから。
頑張ったね。K君。
あらあら、お母さんがいらしたら、いっぺんに緊張が緩んだのか駄々っ子になっちゃった。
だけど、いつもするバイバイは満面笑み。
次の週、K君は胸に花の付いたTシャツを着てきた。おはな、彼ははっきり言った。
その日はほかの子と一緒に粘土で花を作ってみた。
帰りに「毎週いろいろな模様のTシャツを着させてみてください」と、お母さんに一言。
「はい」とお母さんも笑顔で応えてくださった。
なんだかなんだか、楽しくなってきたぞー。 
少しずつ、少しずつ、K君が絵画を通して達成感を感じ、歓びに繋がりますよう