第3弾、読んでみて!思春期


久しぶりの本の紹介です。
今回は少女達を中心にした思春期の物語を三作品。

         
1999年・サンドラ・クローバー著 星の環会
孤児同然のスージーは施設、里親を転々とし、どこへ行ってもトラブルメーカー、学校ではもちろん問題児。そんなスージーが課外活動に参加する。行った先は老人ホーム、手厚く扱われている老人達、もしかしたら介護がしやすいように?本当の人間の尊厳はあるのだろうか、これじゃ生きる屍じゃないかとスージーは感じる。そこで次々にホームのルールを破リ、生と死を見つめ自己を発見していくスージーの姿が痛快。終章、決して感動物に仕立て上げられてないところがまたいい。
        
        
2011年・岸史子著   岩崎書店
不登校の山口君を、内気なまゆが少しずつ引き出していく。なんといっても、いじめられているのに、そんなこと等いっこうに意に介さない、弟のてつの明るさがいい。クラスメイトのきくえちゃん、ミポリン、本田さん、みんなわけのわからない屈託を抱えている。だが、みんながつながりあうことで、何かが変わっていく。まさに人間が息づいている。山口君が少しづつ心を開いていく様が静かに丁寧に語られていく。登場する大人達も中々だ。日常を一歩踏み出すことで、決して問題が解決されるわけではないが、そこに小さくても光が見える。
  
 
1994年初版、2007年復刻版 あさのあつこ著 新日本出版社
ぶきっちよでちょっと斜に構えた遠子と、事情を一杯抱えているのに屈託なく笑い、話す化石オタクの千絵との友情を育む物語。とんがり突っ張って、中々自分の気持を素直に表せない遠子。最後千絵が引っ越し、手紙をもらってから、その返事を心の中で書きながら、あかね色の風の中を涙を見せながら走っていく遠子の姿にぎゅっと胸をつかまされる。著者は書く、泣かないから哀しくないわけじゃない。笑ってるから楽しいわけでもない。と。本当にそうだと思う。

★ある日の教室にて
ある日、教室に休会中のA君がフラリと訪ねてきた。「○○のアニメ(題名を忘れました)見てたら、中学三年生って、一度しかない輝かしい時だって。ぼく、ぜんぜんそんなことない」「どうして?」「毎日塾だし、勉強、勉強、今は仕方がないよね」言葉に詰まって彼を送り出した。 

だれでも一度は通る思春期、自分でもわけのわからない気持ちを何処へ?出会い、人とつながり向き合うことで何かが変わっていく。自分らしく生き延びていってほしいと思う。思春期の痛み、喜び、切なさ、瑞々しさが描かれた秀逸の三作品。子どもも大人の方も、是非!