地震と子ども

一週間が経ちました。相変らず日本のあちこちで余震が続いています。被災地の方々に思いを馳せながらも、私の教室は通常通りの条件にあり、感謝しかありません。
子ども達は経験した事のない激しい揺れ、連日の地震映像等の中で、異常興奮して何時もよりずっとテンションが高いです。子ども達の動揺と不安の大きさを感じます。中には、深く傷を負って教室にこられない子もいます。
ここの子達でさえそうなのですから、被災地の子ども達の心の傷の深さを思うと言葉を失います。実感をもてないまま茫然自失している子、怯え震えている子、家族を失い孤児になった子、屈託なく笑う小さな子もいるかもしれません。様々の子どもの姿が浮び、胸が詰まります。
どうする事も出来ない無力さの中でせめて足もとにいる子ども達のありのままの姿を受けとめ、不安な子達を抱きしめたいと思います。いいえ、普通にしている子達も見えない不安をたくさん抱えていると感じます。今は耳を傾けて子ども達の話す事を静かにじっと聞くことしか出来ません。そうしているうちに、子ども達が穏やかになり、興奮が鎮まっていくのを感じます。

「私の学校の子達ほとんど帰れなくなって、校舎に泊まったんだよ。四時くらいまで眠れなくてみんなとしゃべていた」興奮して話す高校生の女の子。
「校庭で泣いている子がいたよ」
「君は泣かなかったの?」
「面白かった、ジエットコースターに乗ってるみたいで」普段ほとんど話さない高学年の少年が、驚くくらいに話しをする。
何時もは比較的安定感のあるA君は、絵を描きかけては本棚の中の鳥図鑑を引っ張り出して、ひっきりなしに話しかけてくる。
「ねぇ、鳥飼ったことある?えさはどうしたの?その鳥は何処から手に入れたの?」ひとつひとつ丁寧に答えているうちに、ようやく絵に集中。「あのね、おばあちゃんの友達の家、流されちゃったんだよ」しばらくしてまた話しだす。絶句!
「ねぇ、ねぇ、この絵の具、手につけていい」
「いいわよ」
 画用紙に何度も手を押し付けるB子ちゃん。「楽しかった?」との問いににっこり。 
日がたつごとに子ども達の何時もと違う様子がだんだんはっきり見えてきて、もっともっと自分のわけのわからない思いや、心の内を吐き出させた方がいいのではと考えました。
それで、昨日のおけいこでは、絵の具でにじみ絵をした後、全解放、制約なし何を使ってもなにを描いてもOK、OK
「えっ、ほんとにいいの?」「やったぁ」
 いつの間にか子ども達は自分の世界に入り込んで穏やかな静かな時間が流れ出しました。
「あのさぁ」と唐突にしゃべり騒ぐC君に「静かにして、集中できないじゃない」とD子ちゃん。
言いたい事を言いあって、したいようにする。いつもよりその必要性をしんしんと感じたこの一週間でした。そして子ども達が実感を持って被災地の人達の痛みに思いを馳せることが出来るようになることを願います。その為にも私たち大人は、出来るだけ平常心でいたいと思います。どうぞ動揺しているお子さんがいましたら、抱きしめてあげてください!
被災地でこれ以上被害が広がらない事を祈って。